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ジビエ(日本雉)の熟成について
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ジビエは熟成が重要とされていますが、その結果が顕著に現れるのがキジではないでしょうか?
獲れたばかりのキジはサッパリとした味わいなので、古来日本では刺身として賞味するか、ご飯に炊き込むのが一般的でした。熟成された鳥類を使ったジビエ料理は、ヨーロッパからもたらされた文化になります。
冷蔵技術がない昔に、獲物を保存するため洞窟など冷涼で通気性が良い場所に吊るしておいたのがその発祥とされています。
魚にも共通していますが赤身の肉質は旨味が強く、白身の肉質はあっさりと感じます。含まれるミオグロビンの量の違いからなのですが、総じて含有量が多いほど比例してアミノ酸が多く脂肪も含みやすくなります。
白身の代表格であるキジをジビエとして美味しく食べるためにはタンパク質を熟成させ、より多くのアミノ酸に変えた方がベターです。しかし諸条件が重ならないと鳥類の熟成は出来ません。
まず第一にボディにダメージがないこと。散弾銃などで胴体に傷があるものは熟成には向きません。傷から雑菌が入り保存期間中に腐敗してしまいます。
空気銃で明らかにヘッドショットされたものが入手出来たら最高でしょう。
羽毛が付いたまま腸だけを取り除き、昔ながらの「フザンダージュ」という熟成を施してやると、微生物の働きで「えも言えぬナッツのような芳香」が肉自体に纏わり付きます。これはいわゆるドライエイジングというものになります。
モンラッシェのようなしっかりとした白ワインと合わせれば、桃源郷に辿り着くことでしょう。
しかしこのような最上級のキジはそうそうご用意出来るわけではありません。
止まっているキジを空気銃で仕留める確率は限りなく低く、基本的には散弾銃での捕獲になるので。
散弾銃で仕留められたキジは、どこに球が当たっているかは外部からは分かりにくい場合が多くなります。
明確に頭部に当たっている場合を除いては、毛を毟らないと命中した箇所が分からないので、どうしても昔ながらの熟成法は難しくなります。
そこで次善の策として「ウェット・エイジング」という熟成方法で旨味成分であるアミノ酸を生成させます。
やり方は被弾してダメージを負った部分を取り除き次亜塩素酸水で滅菌、特殊な紙で覆い真空パックにします。
0〜2℃で長期に渡って保存しますが、最低でも2週間、状態が良いものであれば1ヶ月ほど熟成させます。
ドライエイジングに比べてナッツのような芳香が出ないのが難点ですが、ロスがなく平均的な肉質を提供出来るのが利点となります。
被弾の度合いが激しいものの場合は、すぐさま処理をしてコンソメやフォンを取ります。出汁を取る場合には鮮度の良いものの方が向いているからです。
出来るだけピュアな仕上がりにしたいので、熟成に伴う香りは不要だと考えています。
以上のように捕獲方法によって熟成法や提供方法が変わるのが、ジビエの扱いの難しさと面白さだと思います。
PS: 下記画像はウェット・エイジング前の雉です。
ほとんどダメージが無いので1ヶ月間の熟成にかけます。